高齢者の方が住宅資金を借りる方法は限られます。
住宅ローンには完済時年齢が決められていますし、現役時代よりも収入が下がっているためです。
しかし、全く方法がないといえばそのようなことはありません。
老後になっても住まいに関する借入方法はわずかながら用意されています。
老後の住まいの借入方法についてご紹介していきます。
高齢者住宅整備資金
この制度は高齢者や、高齢者と同居する家族が住宅改修に必要な資金を借りることができる国が用意した貸付制度です。
融資制度の詳細は自治体によって異なりますが、例えば船橋市の場合には次のように決められています。
・申込条件
- 市内に1年以上住所を有し、介助を必要とする65歳以上の方もしくはその方と同居または同居を予定していること
- 世帯の生計を維持しており、返済能力を有していること。
- 現に、この制度による整備資金を借り受けていないこと
- 返済能力を有している連帯保証人を立てられること。
- 生活保護法による保護を受けていないこと
・融資限度額
- 浴室 130万円
- 居室 240万円
- トイレ 110万円
- その他 100万円
用途ごとにこのように決められており、総額で500万円を限度としてリフォーム資金を借りることができます。
・金利
無金利
・返済期間
最長14年
融資制度の内容は自治体によって異なります。
詳しくはお住まいの市区町村役場へ確認してみましょう。
リバースモーゲージ
高齢者が民間金融機関から住宅資金を借りる方法として最もポピュラーな方法です。
- 返済は借主死亡後に住宅を売却して行う(生存中は返済がない)
- 生活費の他、住宅購入や老人ホーム入居費用などに使用できる
- 高齢者のみが利用できる
最大の特徴は生存中は返済がなく、借主死亡後に担保になっている住宅を売却し、売却代金から融資金を回収するという点です。
老後の年金収入の中から返済をしなくてよいのは大きなメリットですが、死亡後は住宅を子供に残すことはできません。
また、流動性の高い都市部の住宅を所有している人しか利用することは不可能です。
リバースモーゲージを利用すれば、高齢者の方が自宅にバリアフリー工事をすることなども簡単です。
「自分の死亡後は子供に家を残さなくてもよい」という方は利用を検討しましょう。
リバース60
このリバースモーゲージの仕組みを利用した60歳以上専用の住宅ローンが「リバース60」という住宅金融支援機構の住宅ローンです。
主な特徴は次の通りです。
- 60歳以上専用の住宅ローン
- 毎月の支払いは利息のみで元金返済不要
- 返済は借主死亡後に相続人が一括返済するか、担保となっている住宅を売却する
生存中は利息の支払いしか発生しないので、年金収入だけでも安心して返済することができます。
また、借主死亡後には相続人に「残金を返済するか、住宅を売却するか」という選択肢が与えられるので、「親の自宅を残したい」と考える相続人にもメリットがあります。
親子リレーローン
親子リレーローンとは、親と子供が同居する住宅を建築(購入)する場合、親と子供の両方が借主となって住宅ローンを借りることができる方法です。
親が高齢であっても、子供も一緒に借主となることによって住宅ローンを借りることができます。
通常の住宅ローンと同じように低金利で借りることができるほか、借入期間も最長50年など、非常に長く設定できる点が大きなメリットです。
ただし、親子リレーローンは、親と子供が同居する住宅の建築(購入)資金にしか利用することができません。
完済時年齢が長い住宅ローン
一般の住宅ローンでも完済時年齢が長く設定されている住宅ローンであれば、高齢になってから住宅ローンを借りることが可能です。
完済時年齢が80歳以上まで許容されている銀行は次の通りです。
- ソニー銀行: 85歳未満
- みずほ銀行: 81歳未満
- 三井住友信託銀行: 81歳未満
これらの銀行であれば、60歳で住宅ローンを組んでも20年返済をすることが可能です。
また、イオン銀行やみずほ銀行は申込年齢の上限を71歳未満と設定しているので、70歳を過ぎてからでも住宅ローンを借りることは決して不可能ではありません。
超高齢化社会に合わせて、住宅ローンの商品性も高齢者向けへと変わりつつあります。
無理のない返済は収入の20%以下
高齢者向けの住宅ローンは増えていますが、返済計画には要注意です。
年金収入だけでは無理なく返済することができる金額に限りがあり、一般的には収入の20%以下が適正な返済額だと言われています。
年金収入が年間300万円の場合、住宅ローン返済に回すことができるのは年間60万円、金利1%で20年ローンを組む場合は、約1,080万円までしか借りることはできません。
年金収入だけの場合、新築の購入などは現実的ではありませんが、自宅のリフォーム程度であれば高齢になってからでも調達することができるでしょう。
高齢だからこそ、無理のない範囲で住宅ローンを利用してください。