会社の給料から天引きで強制的に貯蓄ができる財形貯蓄。
確実に預金を貯めることができるというメリットがありますが財形貯蓄のメリットは預金だけではありません。
財形貯蓄は住宅ローンを借りやすいという特徴があります。
財形貯蓄を利用している人だけが借りることができる財形貯蓄融資について詳しく見ていきましょう。
財形貯蓄融資とは
財形貯蓄融資とは財形貯蓄を利用している方のみが利用できる、持ち家取得資金のための公的融資で、日本政策金融公庫から借りることができる住宅ローンです。
財形貯蓄には一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の3つの種類がありますが、いずれの貯蓄も給料から天引きで貯蓄され、いずれの貯蓄をしている人でも財形貯蓄融資を受けることができます。
利用条件
財形貯蓄融資を利用するには次の全ての条件を満たしている必要があります。
- 自分で所有、居住するための住宅を建設・購入、もしくはリフォームする方
- 次のすべての条件を満たす方
(1)一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄のうち、1つでも1年以上継続している
(2)申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れをしている
(3)申込日における財形貯蓄残高が50万円以上ある - 勤務先から住宅についての負担軽減措置や住宅援助を受けられる方
- 借入申込日時点で70歳未満の方
- 返済負担率が30%以下(年収400万円以上35%以下)の方
基本的には、財形貯蓄を1年以上継続していれば、財形貯蓄融資の対象になると考えて問題ないでしょう。
融資条件
財形貯蓄融資の融資条件は次の通りです。
- 金利は5年固定のみ
- 当初5年間の金利(団信あり):1.21%〜1.45%(令和3年7月1日〜令和3年9月30日の申込分)
- 当初5年間の金利(団信あり):1.01%(令和3年7月1日〜令和3年9月30日の申込分)
- 融資限度額:次のいずれか低い額
①申込日における財形貯蓄の合計額の10倍以下(上限4,000万円)
②住宅取得に必要な額の90%の額
5年固定金利のみの住宅ローンです。
また、財形貯蓄の10倍までしか借りることができないので、4,000万円を借りようと思ったら400万円の貯蓄が必要になります。
住宅・土地の条件
財形貯蓄融資で購入できる住宅や土地には一定の条件があるので理解しておきましょう。
- 新築住宅建設
- 申込年度の2年前の年の4月1日以降に取得した土地または取得予定の土地(面積の制限なし)
- 新築住宅
- リ・ユース(中古)住宅購入
住宅の購入や建築については面積についての基準などがあらかじめ決まっているので、事前に住宅金融支援機構へ確認しておきましょう。
財形貯蓄融資のメリット
財形貯蓄融資のメリットは次の3つです。
- 審査に通過できる可能性が高い
- 融資手数料がかからない
審査に通過できる可能性が高い
条件さえ満たしていれば財形貯蓄融資は審査に通過できる可能性が高いと言えるでしょう。
- 一定以上の預金がある
- 安定した勤務先に勤務している
- 頭金がある
財形貯蓄融資はこれらの条件を全て満たしているので、住宅金融支援機構にとってもフルローンの住宅ローンよりも信頼度の高い融資です。
そのため、民間金融機関の住宅ローンへ申し込むよりも財形貯蓄融資の方が借りやすいでしょう。
融資手数料がかからない
財形貯蓄融資は融資の手数料が全くかかりません。
民間金融機関であれば、融資額の3.3%などの手数料が必要になることを鑑みれば、財形貯蓄融資の方が諸費用の負担を抑えることができるでしょう。
財形貯蓄融資のデメリット
以前の住宅ローンの金利が今ほど低くなかった時代であれば、財形貯蓄はメリットがありましたが、今はそれほどメリットはありません。
むしろ次の3つのデメリットがあるので利用する人が少なくなっているのが実情です。
- 金利のメリットがない
- フルローンは組めない
- 預金の10倍までしか借りられない
財形貯蓄融資の3つのデメリットについて詳しく見ていきます。
金利のメリットがない
財形貯蓄融資は金利的なメリットがほとんどありません。
団信なしの際優遇金利が1.01%(令和3年7月現在)ですが、これは他の金融機関の住宅ローンと比較して決して低い金利とは言えません。
今は、変動金利で0.5%を切るような住宅ローンが当たり前のようになっているので、固定5年という中途半端な期間で1%強の金利は決して低いとは言えないでしょう。
フルローンは組めない
財形貯蓄融資は住宅価格の90%が借入限度額です。
つまり、フルローンで借りることはできません。
そもそも財形貯蓄を行っていることを前提として融資ですので、当たり前と言えば当たり前ですが、他の金融機関ではフルローンに対応していることと比較すると、この点もデメリットだと言えます。
預金の10倍までしか借りられない
財形貯蓄融資は預金の10倍までしか借りることができません。
そのため、例えば財形貯蓄が100万円しか貯まっていなかったら1,000万円が借入限度額です。
財形貯蓄をある程度の金額貯めている人でないと活用できないでしょう。
また、トータルでも4,000万円までしか借りることができないので、財形貯蓄融資は高額の物件を買うことには向いていません。
金利面でも融資限度額の面でも、わざわざ財形貯蓄融資を利用するメリットはそれほどないので、多くの人が低金利の民間金融機関の住宅ローンか、長期間金利を固定できるフラット35を利用しています。