「住宅ローン借入額は年収の5倍まで」と耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
筆者も銀行員時代に同じようなことを上司から聞いたことがあります。
しかし、住宅ローン審査の現場では住宅ローン借入額は年収の5倍以内という判断はしません。
住宅ローン借入額と年収は相関関係がありますが、借入額は別の指標で判断します。
この記事では住宅ローン借入額の決め方について解説していきます。
自分の年収からどのくらいの住宅ローンを組むことができるのかを把握し、資金計画や物件探しに活用できるようになりましょう。
年収の5倍は限度額の目安
「住宅ローン借入額は年収の5倍以内」というのは、あくまでも目安です。
実際に今は審査の現場で「借入額が年収の5倍をオーバーしていないかどうか」という審査は行なっていません。
あくまでも目安で、「年収の5倍を超える住宅ローンを組んでしまうと返済が厳しくなってしまうよ」という程度に理解しておきましょう。
そのため、審査の現場では年収の5倍以上借りることもできる場合もありますし、年収の5倍に満たない金額しか借りることができない場合もあります。
ただし、筆者が何十年も前の住宅ローン融資ファイルを銀行で見た時には、審査のチェックリストに「借入額は年収の5倍以内か」というチェック項目を目にしたことがあります。
そのため、プロパー融資がメインだった20年以上前は「住宅ローンは年収の5倍以内」という考えが審査でも使われていたものと思われます。
現在は別の指標が使われています。
借入可能額は返済負担率で決める
現在は住宅ローンの借入可能額は「返済負担率」という基準に基づき決まります。
返済負担率とは、「住宅ローンの年間返済額が年収の何%なのか」という指標です。
例えば年収500万円の人が年間120万円の住宅ローンを返済する場合には、120万円÷500万円=24%となります。
ほとんどの住宅ローンでは、返済負担率は30%〜35%までとされており、この返済負担率を超える場合には借入期間を延ばすか、借入金額を減らすなどして年間返済額を引き下げて返済負担率を基準内に収めなければなりません。
考えてみれば、借入額が同じでも借入期間が長ければ返済額が少なくなり、返済は可能になるのに、「借入額は年収の5倍以内」という決まりは合理的ではないように思えます。
それに比べると返済負担率は「返済額が年収の何%か」という指標であるため、無理なく返済できるかどうかを知るためにはこちらの方が合理的です。
なお、無理なく返済できる返済負担率は20%以下とされています。
では、返済負担率35%と20%ではいくら借りることができるのか、年収や借入期間に応じてシミュレーションしていきましょう。
なお、住宅ローン金利は1%とします。
返済負担率35%の借入可能額
では、住宅ローンの基準の返済負担率35%以内で住宅ローンを借りた場合、いくらまで借りることができるのかシミュレーションしていきましょう。
年収 | 20年ローン | 25年ローン | 30年ローン | 35年ローン |
400万円 | 2,520万円 | 3,080万円 | 3,600万円 | 4,110万円 |
500万円 | 3,150万円 | 3,850万円 | 4,510万円 | 5,140万円 |
600万円 | 3,720万円 | 4,540万円 | 5,320万円 | 6,060万円 |
700万円 | 4,440万円 | 5,410万円 | 6,340万円 | 7,230万円 |
このように、返済負担率35%で計算すると、20年ローンでの借入可能額も年収の5倍を超えて年収の6倍程度の金額まで借りることができてしまいます。
実際に返済負担率や担保や勤続年数などの基準を満たせば上記の金額を借りることは可能です。
しかし、一般的に「返済負担率35%」は無理があると言われているので、借りることができたとしても返済を継続していくことは現実的に簡単ではありません。
返済負担率20%の借入可能額
無理のない返済負担率は「年収の2割程度」と言われています。
返済負担率20%での借入可能額はいくらになるのでしょうか?
同様にシミュレーションしていきます。
年収 | 20年ローン | 25年ローン | 30年ローン | 35年ローン |
400万円 | 1,440万円 | 1,750万円 | 2,050万円 | 2,340万円 |
500万円 | 1,800万円 | 2,200万円 | 2,580万円 | 2,940万円 |
600万円 | 2,170万円 | 2,650万円 | 3,110万円 | 3,540万円 |
700万円 | 2,520万円 | 3,080万円 | 3,600万円 | 4,110万円 |
この数字が無理なく返済することができる数字と言えるでしょう。
不思議なことに、返済期間30年の場合には、おおよそ年収の5倍程度の借入額となりました。
つまり、金利が1%で借入期間が30年であれば、年収の5倍以下の借入額が無理のない借入額とは言えそうです。
無理のない返済額から借入額を算出しよう
借入額が年収の何倍かということよりも、「年収からどのくらいの返済であれば無理なく返済していくことができるのか」ということの方が重要です。
「自分の年収からいくら借りることができるのか?」ということから借入額を算出するのではなく、「自分の年収からいくらの返済額なら無理なく返済できるか」を計算し、そこから借入額を算出するようにしましょう。